転生したら竜の花嫁⁉ ~雨乞いの生贄にされた私を捨てられた女なら丁度良いと竜が拾いに来ました~
家族
見つめ合いときめく如何にもなシーンの次には、私はまた放置されていた。
(まあ今回は一言断りがあったけれども)
『バスケットの中の本を全部読ませてもらっても?』
見るからにそわそわしている様子でそう聞かれたなら、駄目とは言えないでしょう。
とはいえ、ずっとレフィーを観察しているのも、自分が逆の立場だとちょっとされたくない。
部屋を埋め尽くさんばかりの本棚の本を借りる? うーん、でもチラッと見た感じ、叔父さんの蔵書以上に小難しいタイトルばかり並んでいる。娯楽目的の読書には向かなさそう。
(軽く家の中を見て回ったら駄目かな?)
そういえばこの家の間取りがさっぱりわからないなと、ふと思い出す。何せ帰宅したレフィーは、案内の「あ」の字もなく、この部屋へ直行してしまった。
そしてここは、おそらく彼が普段長く過ごしている部屋で……つまり完全に日常モード。これは最初から私に家の案内をすることなど、頭になかったと見ていいだろう。
「レフィー。家の中は勝手に見て回ってもいいの?」
確認したいのは、主に水回り設備。扉を開けて違っていたら立ち入らないでおくから、それなら平気だろうか。
そう思いながら私はレフィーに尋ねて、
「勝手にも何も貴女の家です。好きにしたらいいのでは」
「え」
だから返ってきた彼の答に、私は完全に虚を衝かれた。
その間、レフィーがこちらを見ることは一切なくて。
一見突き放したような彼の言葉と態度に、私はしばし固まった。
(あ)
けれど、次に意味が胸にストンと落ちる。
(そうか。私……家族、なんだ)
客人ではなく、家族。だからレフィーは『家の案内』が頭になかった。
そうだ。家族が新しい家に引っ越したとして、子供は家の中を見て回るのに親に断りなんて入れない。親も子供に家の中の案内なんてしない。
レフィーが言ったように、皆それぞれ好きに見て回る。
私が呆然と見ている中、レフィーは今読んでいた漫画を読み終えたのか、本を交換していた。右手で横に除けつつ左手で新しい本を手に取っている器用さに、ついくすっと笑みが漏れる。
(今日会ったばかりのレフィーの方が、十年以上一緒に暮らした叔父たちよりも、本当に家族みたいね)
よく考えたらシクル村の邸は、十年以上いたのに半分以上の部屋に立ち入ったことがなかった。
「ついでです。貴女の荷物を置くのに、適当な空き室を選んで下さい。どこでもいいです。決まり次第、家具類も買い揃えてそちらに設置しましょう」
やはりこちらを見ないで話しているレフィーに、「わかったわ」と返しながら部屋を出る。
「どこでもいい」というのは、「どこの部屋に立ち入ってもいい」に等しい。レフィーはまた、意図しないで私の心の隙間を埋めてくれる。
シクル村での部屋は、ずっと使い勝手に不満を持ちながら使っていた。レフィーはもしかして、私にも選ばせてくれるのだろうか。私用に買い揃えるというのだから、その可能性は高い。
(うわわ。突然の……新婚感‼)
あれがいいとか、これもいいとか。言ったり言われたり……あ、レフィーは特に言わなさそうか。でも尋ねれば何かしらの感想はくれそうな気がする。
ああ、何だか両親と初めて街へ行った日のことを思い出す。あのときは本当に楽しみで、眠れなくて。
「ふふっ」
私は無邪気な子供時代に戻った気分で、『自宅』の探索を開始した。
(まあ今回は一言断りがあったけれども)
『バスケットの中の本を全部読ませてもらっても?』
見るからにそわそわしている様子でそう聞かれたなら、駄目とは言えないでしょう。
とはいえ、ずっとレフィーを観察しているのも、自分が逆の立場だとちょっとされたくない。
部屋を埋め尽くさんばかりの本棚の本を借りる? うーん、でもチラッと見た感じ、叔父さんの蔵書以上に小難しいタイトルばかり並んでいる。娯楽目的の読書には向かなさそう。
(軽く家の中を見て回ったら駄目かな?)
そういえばこの家の間取りがさっぱりわからないなと、ふと思い出す。何せ帰宅したレフィーは、案内の「あ」の字もなく、この部屋へ直行してしまった。
そしてここは、おそらく彼が普段長く過ごしている部屋で……つまり完全に日常モード。これは最初から私に家の案内をすることなど、頭になかったと見ていいだろう。
「レフィー。家の中は勝手に見て回ってもいいの?」
確認したいのは、主に水回り設備。扉を開けて違っていたら立ち入らないでおくから、それなら平気だろうか。
そう思いながら私はレフィーに尋ねて、
「勝手にも何も貴女の家です。好きにしたらいいのでは」
「え」
だから返ってきた彼の答に、私は完全に虚を衝かれた。
その間、レフィーがこちらを見ることは一切なくて。
一見突き放したような彼の言葉と態度に、私はしばし固まった。
(あ)
けれど、次に意味が胸にストンと落ちる。
(そうか。私……家族、なんだ)
客人ではなく、家族。だからレフィーは『家の案内』が頭になかった。
そうだ。家族が新しい家に引っ越したとして、子供は家の中を見て回るのに親に断りなんて入れない。親も子供に家の中の案内なんてしない。
レフィーが言ったように、皆それぞれ好きに見て回る。
私が呆然と見ている中、レフィーは今読んでいた漫画を読み終えたのか、本を交換していた。右手で横に除けつつ左手で新しい本を手に取っている器用さに、ついくすっと笑みが漏れる。
(今日会ったばかりのレフィーの方が、十年以上一緒に暮らした叔父たちよりも、本当に家族みたいね)
よく考えたらシクル村の邸は、十年以上いたのに半分以上の部屋に立ち入ったことがなかった。
「ついでです。貴女の荷物を置くのに、適当な空き室を選んで下さい。どこでもいいです。決まり次第、家具類も買い揃えてそちらに設置しましょう」
やはりこちらを見ないで話しているレフィーに、「わかったわ」と返しながら部屋を出る。
「どこでもいい」というのは、「どこの部屋に立ち入ってもいい」に等しい。レフィーはまた、意図しないで私の心の隙間を埋めてくれる。
シクル村での部屋は、ずっと使い勝手に不満を持ちながら使っていた。レフィーはもしかして、私にも選ばせてくれるのだろうか。私用に買い揃えるというのだから、その可能性は高い。
(うわわ。突然の……新婚感‼)
あれがいいとか、これもいいとか。言ったり言われたり……あ、レフィーは特に言わなさそうか。でも尋ねれば何かしらの感想はくれそうな気がする。
ああ、何だか両親と初めて街へ行った日のことを思い出す。あのときは本当に楽しみで、眠れなくて。
「ふふっ」
私は無邪気な子供時代に戻った気分で、『自宅』の探索を開始した。