転生したら竜の花嫁⁉ ~雨乞いの生贄にされた私を捨てられた女なら丁度良いと竜が拾いに来ました~

番外編2 黒歴史再び

 レフィーと結婚してから数年が経ったとある日のこと。

「陛下の番も人間だったようです」

 すっかり我が家になってしまった魔王城の一室にて『おかえり』の挨拶――という名のガッツリ行くキスを終えた直後に、レフィーはそう切り出してきた。
 ちなみにどちらかが二時間以上外出する場合は、もれなく『行ってらっしゃい』と『おかえり』の対象となる。客観的に見ると「どうなのこれ?」となるが、お互いに「二時間以上外出するなんて偉い!」というレベルの引きこもり。なので、妥当な目安……ということにしている。
 今程、流れるような動きで、ソファに座る私に後ろからキスしてきたレフィー。これまた流れるように彼は、自然な動作で私の隣に腰掛けた。
 そこからレフィーが私の頭を撫でてくるというお約束を待って、私は「それは奇遇ね」と彼に返した。

「それから花嫁という名目の生け贄だったとか」
「そのシチュエーション、そんなにある⁉」

 レフィーが帰ってくる直前まで読んでいた本を再開しようとしたところで、思わず隣を振り返る。

「私が知る限りでは、ミアと陛下の番だけですね」
「よかった!」

 ひとまずそれが、この世界の日常茶飯事というわけではないらしい。私は安心して、私を嬉しそうに撫でるレフィーごと彼のなでなでを堪能した。

「そういったわけで、妃殿下はミアとよく似た境遇です」
「うん、そうね」

 だから仲良くするようにという話だろうか。人の良い陛下と相性の良い女性なら、その辺りの心配は要らなさそう。
 私は早速、比較的ライトな感じのオフィスラブを布教しようと画策して――

「そこまで境遇が似ているのなら、よりミアの本が役立つと思いませんか?」

 しかしその後に来た予想していなかった話の展開に、首を傾げた。
 『境遇が似ている』から『私の本が役立つ』とは、どう繋がった?
 その私の疑問の答はすぐに、簡潔に、レフィーからもたらされた。

「陛下たちにも効果が見込めると、私は考えています」
「その本……は……!」

 待って。いや待って。こんな場面、以前にもあった。あったよ、待って。
 レフィーが片手で持って見せてきた本を、私はぷるぷると震える手で指した。
 数ある薄い本とは一線を画した分厚いその本。日記用ハードカバーなノートにギッシリ綴った内容は、ハードな十八禁ラブロマンス。表紙にタイトルが無いのは、最後の最後に働いた理性の跡。

「レ、レフィー。それは外への持ち出し厳禁だって言ったじゃない。そう約束したじゃない」
「ええ、約束しました。ですからこれは、私の作った写本です」
「なん……だと……?」
「こちらがミアの原本です」

 レフィーが言いながら、空いたもう片手で別の本を見せてくる。
 ジッと見つめれば、確かに「原本」と呼ばれた方が紙が古い。しかし、それ以外はパッと見まったくの瓜二つ……。
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