僕の愛した人は…
 
 隼人がまだ2歳の頃に父親は蒸発して理子が一人で子育てをしていた。妹の優子が産まれたばかりで理子は保育園い隼人を預けて、優子を抱えながら内職をして夜になると水商売をして赤ちゃんの優子は乳児保育の夜間に預け、隼人は信也一人で留守番していた。
 寝てしまえばいいのだが目を覚まして理子がいない事で泣いていても、誰も助けてくれない日々だった。
 淋しさも慣れてしまえば何も感じなくなる。優子が1歳になると隼人と一緒に保育園に預けられ理子は外に働きに出るようになり、水商売と両立していた。
 しかし隼人が5歳になった頃から、理子は男に狂うようになり昼間の仕事は辞めてしまい夜の仕事中心になった。昼間は男を家に連れ込み「母親なんて嫌。私は女でいたいの」と子供の前でも平気な顔で甘えて、そのまま一緒に出掛けていた。
 そのうち育児放棄状態になり、インスタントラーメンを置いて出かけたきり帰ってこない日々も多くなった。お腹が空いてもカップラーメンだけでは足らず、冷蔵庫の中の物をそのまま食べて救急車で運ばれたときもあったが、その度に理子は「めんどくさい事しないで」と激怒していた。
 そんな環境で大きくなった隼人は、小学生になると弱い者いじめをして中学になると悪い連中と絡み夜遊びをするようになった。高校も私立へ進学して大学も私立へ進学した。高校で女遊びを覚えた隼人はしたい放題で、謝って妊娠してしまった女には「知らない・俺の子供だという証拠を持ってこい」と言って責任は一切取らなかった。ある時、女側の両親が怒鳴り込みに来た時もあったが理子が夜の仕事関係の男を使って闇討ちしたという噂もある。大学でもやりたい放題で、実際に隼人に無理やり体の関係を迫られ妊娠して中退した女がDNA鑑定で隼人の子供だと判明していると言って養育費を請求してきた事もあるそうだ。しかし、それも隼人がつるんでいた悪い連中の手によって闇に葬り去られたと噂があり。養育費を要求してきた女の一家が失踪してしまい1年後に山奥で遺体で見つかり生まれた子供も殺されていた事件もあった。

そんな調子で大人になった隼人だが、仕事が順調に進みお金が手に入るようになると理子の為に尽くすようになった。
昔から心臓が弱かった理子が、長年の無理が祟ったのか心臓が悪化して移植しるしか生きる道がないと宣告された。それを知った隼人は理子に適合する心臓の持ち主を探し始めた。

 そんな中、新入社員で入って来たレイラは隼人が今まで出会った女性とは違い、なかなか隼人になびかない女性だった。本当は医者になりたかったが両親の反対でコンサルティング会社へ入社したと聞いていたレイラ。なびかないレイラを何とか自分のものにしたくて隼人は必死になった。

 だがレイラがなびかない理由がレイラの両親・風太とヴァレンティアにある事を知った隼人。
 母ヴァレンティアは体が弱く忙しい父の代わりにレイラが面倒を見ていた。その為レイラは恋愛なんかしない結婚もしないと決めているようで他の男性が言い寄ってきても全てお断りだと知った隼人は風太とヴァレンティアを殺害する計画を練った。

 そして、その計画を実行に移した。
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