君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
「はい、できたわよ」

 考え事をしている間に、ヘアアレンジも仕上がっていた。
 ところどころ編み込み入れながら緩く結い上げられ、柔らかな印象にまとまっている。

 それから、担当の女性が衣装を用意する。
 挙式で纏うのは、晴臣さんと相談しながら決めた純白のウエディングドレスだ。
 裾に向けてなだらかに広がるAラインのもので、オフショルダーのクラシカルなデザインが気に入っている。
 光沢のある生地と、胸もとから腰に施された繊細なレースの飾りが上品に見せてくれる。

「ジュエリーはこれね」

 大きく開いた首回りに、弥生さんがパールのネックレスをつけてくれる。さらにおそろいのイヤリングと、ヘッドドレスもある。

「よく似合っているわ」

「お綺麗です」

 弥生さんをはじめ、スタッフに口々に褒められて気恥ずかしくなる。

 ようやく準備が整った頃、晴臣さんが私を尋ねてきてくれた。

「ああ、亜子。すごく綺麗だ」

 彼は私を見ると、ハッと息をのんだ後に満面の笑みを浮かべた。
 そういう晴臣さんこそ、光沢のあるシルバーのタキシードとてもよく似合っている。

「晴臣さんも、素敵です」

 普段はカジュアルに整えられている髪も、今日は前髪を上げてカッチリとまとめられている。
 彼と過ごす時間にはずいぶん慣れてきたはずなのに、普段と違う装いをしているだけでなんだか緊張してしまう。

「ありがとう」

 甘い雰囲気を察して、スタッフがそっと席を外す。室内には弥生さんと私たちだけになった。
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