君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
「こんな綺麗な亜子の隣に立てるなんて、本当に幸せだ」

「はいはい。惚気はいいから」

 嘆息する弥生さんに、ようやく我に返る。
 それからしばらく三人で談笑をしていたところに、再び扉をノックする音が響いた。

「どうぞ」

 晴臣さんが許可を出すと、扉が雑に開けられる。

「亜子! 私の用意した白無垢を着ないとは、どういうことだ」

 怒りに顔を真っ赤にした父が、どすどすと足を踏み鳴らしながら入ってきた。すかさず立ち上がった晴臣さんと弥生さんが、私の前に庇うように立ちふさがる。

「事前に届けさせておいたはずだぞ」

「どうしたもなにも、あなたの用意したものは使用しないと散々伝えてきたはずですよ」

 父とは対照的に、晴臣さんが落ち着き払って返す。

「私は承知していない。亜子、今からでも遅くない。さっさと着替えるんだ」

 さらに私に近づこうとした父を、晴臣さんが阻止する。
 邪魔された苛立ちのまま、父は彼をギロリと睨みつけた。

「生意気な。こっちが下手に出れば散々好き勝手言いやがって」

「お父さん!」

 ついに本音を漏らした父を止めようと声を上げたが、ひと睨みで流される。

「お前が亜子に本気なのはわかっている。だが、そういう態度ならこの結婚は許可しない」

「それはよかった」

 にこりとした晴臣さんに、父が怪訝な顔をした。
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