君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
 すっかり翻弄されている間に、彼の手が下腹部をなでながら足の付け根に触れる。
 その中心にそっと触れられて、ビクリと体が大きく跳ねた。

「やっ……だ、だめ」

 これが本気で拒絶でないのは彼もわかっているようで、私を攻める手は止まらない。
 深く口づけながら、彼の手はさらに私の体の奥を暴いていった。

「あっ、あっ」

 薄らと感じはじめた快感が、次第に大きくなっていく。
 それがなにかに追い詰められているようでなんだか怖くなり、晴臣さんに必死でしがみついた。

 下腹部の奥の疼きはどんどん大きくなり、閉じた瞼の裏が白く染まる。

 もうなにも考えられない。そう思った瞬間に、全身を大きな快感が駆け抜けて体が小刻みに痙攣した。
 乱れた呼吸のまま、目を閉じて全身を襲う心地よい気怠さに身を任せる。

 晴臣さんは私を抱きしめたまま瞼に口づけて、それからそっと起きあがった。
 途端に心細く感じて薄らと目を開けると、彼は雑な仕草で自身の着ていた服を脱いでいった。
 そうして私と視線を合わせたまま、再び覆いかぶさってくる。

「亜子、君がほしい」

 掠れた声で懇願されて、胸がきゅっと締めつけられる。
 ひとつうなずき返した私に、彼は「ありがとう」とささやいた。

 唇に軽く口づけた彼は、私の中へゆっくりと身を沈めてきた。

 張り裂けるような痛みに唇をかみしめる。目じりに溜まった涙は、晴臣さんの唇が吸い取っていった。

「すまない、亜子。もう少しだけがんばって」

 シーツを握りしめながら、コクコクと首を振る。
 私の手を優しく解いた彼は、自身の首もとに添えさせた。

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