君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー

エピローグ

「ほら、あずき。こっちだ」

「つくし、いい加減にないと、ネロに嫌われちゃうよ」

 晴臣さんと結婚して半年が過ぎた。
 梅雨はまだ明けていないが、幸いにも今は晴れ間がのぞいている。

 今日は健康診断を受けさせるために、これから三匹を動物病院へ連れていく予定だ。

 私たちがキャリーバッグを持ち出してくると、ネロはおとなしく従う様子を見せた。
 けれど元気のあり余るほかの二匹はそうはいかない。つくしはネロを追いかけ回し、すっかり興奮しきってキャットタワーに勢いよく駆け上がったまま降りてこない。
 あずきは遊んでくれると勘違いして、捕まえようとする晴臣さんに何度もジャンプをして纏わりついている。

 ドタバタしながらようやく三匹を捕まえ終えた頃、私はすっかり疲れきっていた。

「はあ」

 車に乗り込み、背もたれにぐったりと体を預けて大きく息を吐き出した。そんな私を見て、晴臣さんがおかしそうに笑う。

「すでにひと仕事終えたって感じです」

「そうだな」

 思わずそうこぼした私に、晴臣さんも同意した。

 動物病院へ着くと、それほど待たずして名前を呼ばれた。
 ふたりで手分けして、三匹一緒に診察へ入る。

「おお、あずき。調子はどうだ?」

 院長先生が小さな頭をわしゃわしゃとなでながら、手早く診察を進める。
 私が正式にあずきの飼い主になったと伝えたところ、先生は大きく安堵していた。

「よし、問題ないな」

 次はつくしが診察台に乗せられる。

「つくしも、大きくなったな」

 この子を初めてここへ連れてきたときは、ドロドロに濡れ細った状態だった。それが今では体重も標準的になり、毛並みも艶々している。

「つくしも問題ないぞ」

 最後にネロを診てもらった。
 ネロの病気は手術が成功して根治したとはいえ、再発をするのではないかと常に不安が付き纏う。

「ネロも元気だな」

「よかった」

 思わず晴臣さんの方を見ると、私にうなずき返してくれた。
< 115 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop