君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
つくしを助けてから十日が経った頃、就業中に父から社長室へ来るようにメールが送られて来た。
会社のトップが、ただの事務員でしかない私を呼びだす理由などそうそうないだろう。もしかして家庭内の話だろうかと考えてみたが、私に心当たりはない。
理由が不明なだけに、悪い想像ばかりが大きくなる。なにか失態をしたのかと考えて、気が重くなった。
時間ぴったりに、社長室の扉をノックする。
「失礼します」
うつむきがちに、恐る恐る足を踏み入れた。
「ああ、来たか」
そろりと顔を上げた先に見つけた客の存在に気づき、驚きに目を見開いた。
「どうして……?」
私の小さなつぶやき声を捉えた三崎さんが、ひそかに微笑み返してくる。
それに上手く返せないほど混乱しながら、父の隣に腰を下ろした。
「こちらが、娘の亜子です」
私の様子がおかしいことにまったく気づかないまま、父がお互いの紹介をはじめる。
「よ、よろしく、お願いします」
「ええ、よろしくお願いします」
なんとか声を発した私に、三崎さんがにこやかに返してきた。
「それでこちらは三崎商事の副社長に就任した、三崎晴臣君だ。今月から、彼がうちを担当してくれることになった」
「え?」
そんな話は、彼からはなにも聞いていない。
「三崎晴臣です。亜子さんと会うのは、十日ぶりくらいかな」
私に向けられた彼の柔らかな表情は、まるで「メッセージは毎日やりとりしているけれど」と伝えてくるようだ。
会社のトップが、ただの事務員でしかない私を呼びだす理由などそうそうないだろう。もしかして家庭内の話だろうかと考えてみたが、私に心当たりはない。
理由が不明なだけに、悪い想像ばかりが大きくなる。なにか失態をしたのかと考えて、気が重くなった。
時間ぴったりに、社長室の扉をノックする。
「失礼します」
うつむきがちに、恐る恐る足を踏み入れた。
「ああ、来たか」
そろりと顔を上げた先に見つけた客の存在に気づき、驚きに目を見開いた。
「どうして……?」
私の小さなつぶやき声を捉えた三崎さんが、ひそかに微笑み返してくる。
それに上手く返せないほど混乱しながら、父の隣に腰を下ろした。
「こちらが、娘の亜子です」
私の様子がおかしいことにまったく気づかないまま、父がお互いの紹介をはじめる。
「よ、よろしく、お願いします」
「ええ、よろしくお願いします」
なんとか声を発した私に、三崎さんがにこやかに返してきた。
「それでこちらは三崎商事の副社長に就任した、三崎晴臣君だ。今月から、彼がうちを担当してくれることになった」
「え?」
そんな話は、彼からはなにも聞いていない。
「三崎晴臣です。亜子さんと会うのは、十日ぶりくらいかな」
私に向けられた彼の柔らかな表情は、まるで「メッセージは毎日やりとりしているけれど」と伝えてくるようだ。