君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
 こめかみの傷を見られたときは、彼の反応にショックを受けた。
 でもそれは私の勘違いだった。純粋にケガを負った当時の私を心配したのだと、晴臣さんは隠さずに明かしてくれたから、私の中に蟠りはもうない。

 それよりも、言い辛かっただろうに話してくれた彼の誠意がうれしかった。もともとネロへの接し方を見て晴臣さんに好感を持っていた。こうして話をして、それがますます高まったのはたしかだ。

 容姿があれほど素敵で、三崎商事の副社長という立場にある彼ならば、きっと周囲の女性は放っておかないはず。
 醜い傷跡がある私は彼にふさわしくない。その悩みはこの先いつだって私につき纏うのだろう。

 それでも彼が私を望んでくれるのなら、そばにいたい。

 つくしを預かってくれたとか、酒々井家の人たちと違って私を対等に見てくれる優しさだとか、彼のそんな態度が前向きにさせてくれる。

 決して父からの命令だからではなくて、私は自分の意思で彼の求めに応じたいと強く思った。
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