君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー

愁いを忘れて

 晴臣さんと約束した週末が近づくにつれて、期待と緊張で心がなんだかふわふわしていた。

 明日はなにを着ていこうかと、就寝前にそれほど数のないワードローブを眺める。
 いつもは飾りの少ないシンプルな服装が多いが、さすがにもう少しオシャレに気を使わなければ晴臣さんの隣に立つ勇気が持てない。彼に恥をかかせるわけにはいかず、少しでも見栄えの良い服を探した。

 翌日になり、用意しておいたモスグリーンのロングスカートとクリーム色のカット―に着替える。そこに母の形見である、ひと粒パールのネックレスをつけた。これで少しは華やかさが出せるはず。

 約束の時間より少し前に外へ出る。
 九月の下旬となっても、まだまだ日差しが強い。あずきの散歩は夜に行こうかと考えながら、自宅から少し離れたところにある駐車場へ向かう。

 目的の場所に、すでに彼の車が停まっているのを見つけて慌てて駆け寄った。車を降りてきた晴臣さんが、笑みを浮かべて私を迎えてくれる。

「お待たせして、すみません」

「いや。時間よりまだ少し早いくらだ。ほら、乗って」

 ドアを開けてくれたお礼を言いながら、助手席に乗り込む。

「じゃあ、行こうか」

 それから晴臣さんも運転席に座り、車を発進させた。
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