君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
「その、私と妹の史佳は、あまり仲が良好ではなくて。中学生の頃に……」

 さすがに自分が正妻の子ではないと明かす勇気までは持てなかった。
 だから史佳との確執の原因がぼかしつつ、当時の状況を話して聞かせる。

「妹は、私がそこまで大きなケガを負うなんて想像できていなかったんでしょうね。怖くなったのか、家族には私の不注意が原因だと話していました」

 私の話に耳を傾けていた晴臣さんが、不快そうに眉間にしわを寄せた。

「亜子は否定しなかったのか?」

 酒々井家出の私の扱いを彼に知られたくなくて、曖昧な笑みを返す。

「私にもいたらないところがあったんです。当時を思い出すと辛いのは本当ですが、もう許していますから」

 史佳からは、一度も謝罪をされていない。
 でも誰かをずっと恨み続けるのもしんどくて、意識して忘れているというのが本当のところだ。

 さらにしわを深くしていた晴臣さんだったが、仕方がないとでもいうように息を吐き出してようやく表情を緩めた。
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