君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
「俺は、その傷跡が他人からどう見られるかなど気にしていない。だがいくらそう言っても、亜子の苦しみが本当には解消されないのもわかっている」

 晴臣さんは、気づかわしげに眉を下げた。

「それが少しでも和らぐように、傷跡を目立たなくする方法を俺も一緒に探す」

「晴臣さん」

 ケガを負った当初、父は烈火のごとく怒っていた。けれど時間が経てばまったく気にかけなくなり、もしかしたら今ではもうすっかり忘れているのかもしれない。それはまるで私に興味がなくなったようにも思えて、愛情など端から期待していなかったのに惨めな気持ちにさせられた。

 私を疎んでいる義母が、必要以上の治療を受けさせてくれるはずがない。許されたのは、最初に受けた最低限の処置だけだった。

 働いてお金を稼ぐようになっても、都に言われるまま家に生活費を入れて、さらにあずきにかかる費用を負担していれば余裕などほとんどない。
 そんな事情もあって、私は傷跡を薄くする努力よりも髪や眼鏡で隠す方法を選んだ。

「ありがとう、ございます」

 婚約者になったとはいえ、晴臣さんと顔を合せたのはほんの数回だ。そんな間柄にもかかわらずこんなふうに言ってもらえ、胸が熱くなる。
 声がわずかに震えてしまったが、気づいているだろう彼はそこに触れずにいてくれた。
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