君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
 食事を終えて店を出ると、次は彼の希望で大きなペットショップへ向かった。

「つくしに新しい玩具でも買ってやろうと思って」

 予防接種の代金やつくしの年齢に合わせたエサの費用などは、晴臣さんには私が負担すると前に申し出ている。でも彼は、そんな必要はないと一貫して受け取ろうとしない。

 今日もきっと払わせてもらえないのだろうと、晴臣さんに向ける視線がつい恨みがましくなる。
 そんな私に気づいた彼が苦笑した。

「必死に生きようとがんばったあの子が愛しいから、大切にしてやりたいんだ。亜子だって同じだろ?」

 そう言われたら、うなずかざるをえなくなる。
 金銭的な話は完全に納得したわけではないものの、これ以上はしつこくなりそうであきらめた。

 彼と共に、陳列された商品を見て回る。
 途中であずきに似合いそうな服を見つけて手に取ると、それに気づいた彼も「真っ白な毛に映えそうだ」と言ってくれた。

「ネロの親は、姉夫婦が飼っていた猫なんだ」

 ゆっくりと足を進めながら、晴臣さんが教えてくれる。

「子猫が三匹生まれて、希望者がいれば譲るから俺の知人にも聞いてほしいと頼まれた。もちろん、姉夫婦は貰い手がいなければすべて自分たちで面倒を見るつもりでいたんだけどな」

 お姉様にはお会いしたことはないけれど、彼の話しぶりから察するに優しい人なのだろう。

「人に声をかけるからには俺も実際に子猫を見ておこうと、姉の家に行ったんだ」

 そこまで聞けば、先が読めてくる。
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