君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
「もちろん、亜子が許してくれるなら触れたいと思っているが」

 私の不安を吹き飛ばす彼の言葉に、沈んだ心が急浮上する。同時に、向けられた色気のあふれる流し目にじわじわと頬が熱くなった。

「亜子」

 うつむいた私の頬に温かな手が添えられて、ピクリと肩が跳ねる。
 鼓動は痛いほど打ち付けてくるし、恥ずかしさで彼を見られない。

「好きだよ」

 突然の告白に息をのむ。

 結婚するからには、少しでも良好な関係を築いた方がいいに決まっている。彼が私を好意的に見てくれるのは、それも理由のひとつかもしれないと考えていた。

 それがまさか、好きだと言ってもらえるなんて信じられない。
 胸がいっぱいになり、ジワリと涙が滲んだ。

 私もこの先、きっと彼を好きになる。
 ううん。もうすでに、晴臣さんが気になる存在になっている。
 それを素直に告げる勇気はまだないけれど、少しでも彼に伝えたい。

「あ、ありがとう、ございます。その、私はあなたをもっと知りたいです」

 上手い返しのできない私に、晴臣さんが優しく微笑み返してくる。彼のその肯定が、私の自信につながる。

「だから、お邪魔させてください」

「よかった。それじゃあ、行こうか」
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