君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
「元気になったのね」

 この子を助けたのは、後先を考えない無責任な行動だったかもしれない。
 けれどこの愛らしい姿を見ていると、無事で本当によかったと思う。

「いたずらばっかりしてるんだって? 晴臣さんやネロの言うことをちゃんと聞かないとだめよ」

 すっかり自分とつくしの世界に入り込んでいたところで、隣から忍び笑いが聞こえてハッとする。

「ご、ごめんなさい」

「いや、謝る必要はないよ。それより、亜子は動物が一緒だとリラックスできるみたいだ。俺に対しても今みたいに敬語はいらないし、遠慮も必要ないんだけどな」

 さすがにそれはできないと言いかけた私の足もとを、ネロが体を擦りつけながら通過していく。

「ほら、ネロも亜子に気に入ったようだ」

「がんばって、直します」

 小声で答えた私を、晴臣さんは声をあげて笑った。

「がんばる必要なんてない。素の亜子でいてくれればいいんだ」

 彼はありのままの私を受け入れてくれる。その無条件の許容が、私を幸せな気持ちにさせてくれた。
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