君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
 晴臣さんが淹れてくれたコーヒーをいただきながら、ネロの尻尾を追い回すつくしを眺める。
 その微笑ましい姿とは裏腹に、この場に慣れてきた私は徐々に不安に襲われていた。

「晴臣さん。その、つくしの貰い手が未だに見つからなくて」

 あれから友人らも知り合いに声をかけてくれたが、よい返事は誰からももらえていない。これ以上晴臣さんに迷惑をかけるわけにもいかないのに、頼る先が本当になくなってしまった。

「前にも言ったが、見ての通りつくしはこの場にすっかり馴染んでいる。ネロとの相性もいいから、もうこのままでいいんじゃないか」

「でも……」

「ああ、そうか」

 なにかを思いついたのか、晴臣さんが楽しそうな顔になる。

「俺たちは結婚するんだから、亜子が一緒に二匹の面倒を見てくれればいい。それなら俺に押しつけたとか、申し訳ないとか思わないだろ?」

 正直に言えば、さっきから二匹の愛らしさにメロメロになっている自覚はある。もちろんあずきもかわいくて仕方がないが、ネロとつくしも飽きずにずっと見ていられそうだ。

 彼の提案する生活は、きっと賑やかに違いない。
 それは確信できるものの、結婚を意識するとどうしても動揺を隠せなくなる。

「結婚はあと少し先か。なんなら、先に一緒に暮らしはじめてもいいが」

 驚きに目を見開く。

「ああ。しばらく俺たちの婚約は内密にしておくんだったな」

 残念だなんて言われたら、もう彼の方を見られなくなった。
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