君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
 化粧品を扱う仕事をしているのなら、お姉様は美意識が高いはず。この醜い傷跡を目にしても、果たして私を受け入れてくれるだろうか。

 すぐに返事を返せない私に、晴臣さんが少し慌てた口調で言う。

『誤解しないでほしい。姉が亜子を悪く捉えはしないと俺が保証する。扱っている商品の中には、傷跡や痣などを目立たなくする目的のものもあるみたいなんだ。だから決して偏見は持っていない』

 事情を知られてほっとする。逆に、お姉様の扱う商品がどんなものかと興味がわいた。

「気にかけてくれて、ありがとうございます。私の傷について、お姉様に話してもらってかまいません」

『ありがとう。早速、連絡しておくよ』

 これまでのトラウマから、傷跡が関係すると必要以上に弱腰になってしまう。
 そんな私の手を、晴臣さんはいつも優しく引き上げてくれる。

『それじゃあ、お休み』

「おやすみなさい」

 不安がまったくないとは言えない。
 でも、期待も抱いている。

 通話を終えても彼の優しい声音が耳に残り、温かな気持ちで眠りについた。
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