君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
 約束の日はあっという間にやってきた。
 自宅近くの駐車場で待ってくれていた晴臣さんと合流して、早速出発した。。

 彼と会うのは二週間ぶりになる。とはいえ、毎日のようにメッセージでやりとりをしていたため、距離が近づいているように思う。

「個人的な話になるから、今日は姉の自宅に招かれているんだ」

「わ、わかりました」

 初対面でプライベートエリアにお邪魔するのは、さすがに気が引ける。

「心配しなくてもいい。姉はサバサバとした性格で、きっと付き合いやすいんじゃないかな。それに、猫もいるから」

 さらりと加えられた情報に反射的に彼の方を向くと、晴臣さんは視線を前に向けたまま口角を上げた。

「亜子をリラックスさせるには、やはり動物の存在が一番のようだ」

 なんとなく恥ずかしくなって、ごまかすように視線を窓の外に向ける。

 お姉様の自宅は晴臣さんのマンションからそれほど離れておらず、ほどなくして到着した。

「いらっしゃい」

 玄関でにこやかに出迎えてくれたのは、スラリと背が高くて華やかな印象の女性だった。

「あなたが亜子ちゃんね。どうぞ、上がって」

「お邪魔します」

 リビングに案内されて、晴臣さんと並んで座る。お茶をいただきながら、お互いの紹介をし合った。

「晴臣の姉の弥生(やよい)よ。これからよろしくね」

「酒々井亜子と申します。こちらこそ、よろしくお願いします」

「もうすぐ家族になるんだから、そんなに畏まらなくてもいいって。私のことは好きに呼んでくれてかまわないから」

「それじゃあ、弥生さんって呼ばせてください」

 彼女の気さくな様子にほっとする。
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