君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
 週末になり、史佳に気づかれないようにこっそりと家を抜け出した。
 足早に向かったいつもの駐車場に着くと、タイミングを同じくして晴臣さんの車が入ってきた。

「さあ、乗って」

 今日は、結婚後に私が使う家具を見に行こうと誘われている。

 彼には、新しい生活の準備が進んでしまう前に私が正妻の子でないと告げるべきだ。
 自分の感情を優先してはだめだと頭では理解していても、晴臣さんとの未来が無くなってしまうことが怖くてなにも言いだせないでいた。

 そんな事情もあって必要なものは自分で購入するつもりでいたのに、晴臣さんは自分が用意するとどうしても引いてくれない。そのまま彼に押しきられて今に至る。

 彼に連れられるまま輸入家具の専門店に到着して、展示されている商品をゆっくり見て回った。中には一点ものもあり、値段は私の想像以上に高いようだ。

「は、晴臣さん。やっぱりほかのお店のもので……」

 誘いを受けた時点で、私からは量販店のものでかまわないと伝えてあったのにと恨めしくなる。
 高額に怖気づいてあらためて伝えたが、「一生ものだと思えば、それほど高くない」と返された。

 その〝一生〟という言葉に、私が舞い上がりそうになっているなど、彼は気づいてないだろう。
 隠し事を後ろめたく感じながら、この先ずっと晴臣さんの隣にいてもいいと許されたことに安堵もしていた。

 私が正妻の子でない責任は父にある。それを隠して三崎家との縁談を結んだのも父だ。
 ずるいとわかっているけれど、晴臣さんから別れを突きつけられるまではそれについて考えないでおこうと決めた。
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