君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
わずかに不快そうな表情をした父だが、すぐに取り繕う。
「あなたは今回のことで、私の提示したように亜子の気持ちを尊重しましたか?」
「もちろんだとも。亜子だって、あのふたりの仕打ちに心を痛めていたはずだ。いなくなって、ほっとしだろ?」
そんなの当たり前だろうとでも言うように、父が私の方を向く。けれど、私はもうこれまでのようにうなずけそうにない。
「そうだろ、亜子?」
声に圧を滲ませて再び父が私に尋ねてきたが、それでもやっぱり同意はできなかった。
震える私の手に、晴臣さんが手を重ねてくれる。その温もりに後押しされて、ゆっくりと口を開いた。
「私は、そんなふうにお願いした覚えはありません」
初めて反発した私を、父がジロリと睨みつけてくる。
怖くてたまらなくても、ここで引くわけにはいかない。
「たしかに、これまで私はふたりの言動に苦しめられてきました。でもそれは、突然やってきた私にも原因があるとわかっています。だから、ふたりにいなくなってほしいだなんて、考えたこともありません」
願ったのは、家族三人の和解だ。
「なにを言ってるんだ、亜子!」
凄む父に、ピクリと肩が跳ねる。
「酒々井社長」
けれど晴臣さんに咎めるように呼ばれて、父は前のめりになっていた身を渋々引いた。
「私はただ、史佳の犯罪行為をあなたがきちんと認識して、その上で二度と同じ過ちを繰り返さないように、家族三人で話し合ってほしかった」
それをせずに、父は一方的にふたりを突き放した。この人には、彼女たちに歩み寄る気など微塵もなかったのだろう。
これでは彼女たちは私への憎悪を大きくするばかりで、なんの解決にもなっていない。
ふたりと私が和解できるとまでは思っていなかったけれど、さすがにこんな終わり方は残念でならない。
「あなたは今回のことで、私の提示したように亜子の気持ちを尊重しましたか?」
「もちろんだとも。亜子だって、あのふたりの仕打ちに心を痛めていたはずだ。いなくなって、ほっとしだろ?」
そんなの当たり前だろうとでも言うように、父が私の方を向く。けれど、私はもうこれまでのようにうなずけそうにない。
「そうだろ、亜子?」
声に圧を滲ませて再び父が私に尋ねてきたが、それでもやっぱり同意はできなかった。
震える私の手に、晴臣さんが手を重ねてくれる。その温もりに後押しされて、ゆっくりと口を開いた。
「私は、そんなふうにお願いした覚えはありません」
初めて反発した私を、父がジロリと睨みつけてくる。
怖くてたまらなくても、ここで引くわけにはいかない。
「たしかに、これまで私はふたりの言動に苦しめられてきました。でもそれは、突然やってきた私にも原因があるとわかっています。だから、ふたりにいなくなってほしいだなんて、考えたこともありません」
願ったのは、家族三人の和解だ。
「なにを言ってるんだ、亜子!」
凄む父に、ピクリと肩が跳ねる。
「酒々井社長」
けれど晴臣さんに咎めるように呼ばれて、父は前のめりになっていた身を渋々引いた。
「私はただ、史佳の犯罪行為をあなたがきちんと認識して、その上で二度と同じ過ちを繰り返さないように、家族三人で話し合ってほしかった」
それをせずに、父は一方的にふたりを突き放した。この人には、彼女たちに歩み寄る気など微塵もなかったのだろう。
これでは彼女たちは私への憎悪を大きくするばかりで、なんの解決にもなっていない。
ふたりと私が和解できるとまでは思っていなかったけれど、さすがにこんな終わり方は残念でならない。