君しか考えられないーエリート御曹司は傷物の令嬢にあふれる愛を隠さないー
* * *

 結婚式の当日は、寒さは厳しいものの気持ちのよい青空が広がっていた。季節的に積雪の心配もしていただけに、晴れてほっとしている。

 今日はこの後、大勢の人前に立つと思うと終始落ち着かない。
 私の様子がいつもと違うせいか、つくしやネロはあまり近づかないで遠巻きに見ていた。

 時間通りに会場へ入り、ブライズルームに通される。
 出迎えてくれた弥生さんの顔を見て、緊張がわずかに和らいだ。

 それからすぐさま準備に取り掛かった。鏡の前に座った私に、弥生さんが迷いのない手つきでメイクを施していく。
 傷をわからなくするシートは、事前に試させてもらっている。下地と併用すれば、至近距離で見ても傷跡などまったく気づかないほど滑らかな肌に仕上がる。

「綺麗よ、亜子ちゃん」

 メイクが仕上がり、弥生さんが私の背後から鏡を覗く。
 どこから見てもこめかみの傷跡はわからなくて、それだけで自身が持てて背筋もすっと伸びる。

「弥生さん、さすがです!」

 うれしくなって、ついはしゃいだ声になる。

「満足してもらえてよかったわ。さあ、髪も整えちゃいましょう」
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