溺愛トライアングル!


口を開こうとしたタイミングで、祐月も口を開く。




「返事は…明日でいい?」




私は息を吐いた。肺の中も、血液の中の酸素も、全部出すように。

視界が少し、狭窄する。

めまいがして、体中が体調不良を訴える。

明日。それなら、今言ってくれたほうが楽なのに。

すっぱり笑って、「じゃあ今まで通り、友達で!」って言えたほうが、何千倍も楽なのに。


祐月って、罪なヤツ。

祐月は明日、きっと「ごめん」って言う。

私は明日、言われた時すぐに「じゃあ今まで通り!」と言うだろう。

だけど祐月は気づく。


私の目の中に、絶対に陰りがあることに。


私は自分で言うのも何だけど、ポーカーフェイスがうまいから、祐月以外は誰も気付けない。

祐月は気づく。むしろ、祐月じゃなきゃ気付けない。


こんなにも大切で、特別なのに。

私は壊しちゃったんだ。この関係を、ほんの少しでも。



「…いい?」



なかなか答えない私に、祐月が顔を覗き込んでくる。

断られるって知ってても、その距離の近さは変わらないんだな、と苦笑いを浮かべる。





「いいよ。祐月の好きなようにしてほしい」





私はそう微笑んで、祐月とは別の道を歩き始めた。

祐月から姿が見えなくなると、私はすぐさま駆け出した。

祐月に、バレないように。

泣いてることも、泣きたいことも、辛い顔も、苦しい顔も。

好きな人に、見られたくないものを隠すように。
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