間違いだらけのしあわせ


好きな人に,本命の彼女が出来た。



たかがそれだけの事が,こんなにも重い。

自分のしてきたこと全てが,絶望に近く思えた。

自分の存在が,揺らぐ。

くらくらする。

前に会って,肌を重ねたそれが,まさか最後だったなんて,どうして想像できただろう。

私は結局,彼の"セフレ"以上にはなれなかった。

好んでセフレになったわけじゃない。

でも高嶺にいた彼に恋をして,その道を選んだのは私。

彼が好きだった。

それをそのまま告げても意味がないことは知っていた。

だからこそ,次に近いそれを選んだのに。

慢心している内に,横から拐われた。

いつも通りスマホで呼んで,向こうから来てくれることに多幸感を覚えて。

不純な行為の準備も済ませて。

なのに,今日で会うことすらなくなるの?

どうして,だからそれは,好きな人が出来たから。

彼女が出来たから。

信じ,られない。

直接伝えてくる彼の無駄に真っ直ぐなところも,申し訳なさそうな顔も,何もかも受け入れられない。

ねぇ,待ってよ。

そんなこと,聞いてないのに。

ずっと私だけだったじゃん。

なんで,いつ出会ったの?

どうして私じゃなくて,その子だったの?

分かってた。

手を伸ばしたその時から。

このポジションは,甘くて素敵で,特別だけど。

その近さも甘さも存在も,全てが"2番目"以上になれないこと。

この人生が,もし誰かの目にとまる漫画だったなら。

きっとヒーローは彼。

彼に選ばれる彼女は,ヒロイン。

じゃあ,私はなんだと思う?

私は……
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