間違いだらけのしあわせ

「触らないで」



ぴくりと彼が動きを止める。

どんなに視界がぼやけても,あんなに一挙一動気にしてきたの。

あなたが何をしようとしたかなんて,空気だけで分かるんだよ。



「……っひ……っ」



漏れるな,声。

彼のはじめてを,今の彼女から奪い続けたくせに。

彼女が知ったら,泣かせてしまうかもしれない存在のくせに。

見てしまった。

良かったねと言った私は,視界のすみっこで,彼が笑ったところ。

どうして欲張ったんだろう。

どうして真っ直ぐ伝えなかったんだろう。



「ふ……。……す」



きだったの。

好きだったのに。

"彼女はもう抱いた?"

こんなこと,いいたくない。

考えたくもなかったのに。

こんなことでしか,勝れそうな所が思い付かなかった。

最低だ,さいていすぎ。

私にだって純粋だったはずの恋心は,どこに行っちゃったんだろう。

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