間違いだらけのしあわせ
『おー。前は助けてくれてありがとー!』
入学式のとき。
たまたま困ってた彼に声をかけた。
たまたま,最初から人気だった彼の"友達"になれた。
十分特別だった。
だから彼は,最初に私が一線を越えようとしたときに振り払わなくて。
震える私を突き飛ばさなくて。
それくらい,私が頑張ろうと思えるだけのきっかけは,充分あったんだと思う。
でも,そうしなかったから。
目の前にいる彼は今も綺麗で,私ばっかり心が汚れてる。
「寂しいなぁ。私,まともな恋なんてしてないもん。先越されるなんて思わなかった」
違うよ,これは別に,あなたの事が好きで泣いてるわけじゃないよ。
あなたはそういうのじゃないもんね。
苦しいけど,ちゃんと騙されてよ。
「……出来るよ,まともな恋」
「え」
どういうつもり?
そんな疑問を張り付けた顔じゃ,彼を見れない。
あなたが一番,知ってるでしょう。
無理なんだって。
「困ってた俺を助けてくれたのは,1人だけだった。困ったり嬉しかったりしたときに気付いてくれるのも1人だけだった」
そんな風にいわないでよ。
こんな風になった私が,まだあなたの中では綺麗に見えてるみたいに聞こえるから。
私を肯定しないでよ。
こんなにも後悔してるのに。
「優しくて素直で,隠したり嘘ついたりしない。いつも溌剌で,そんな女友達が出来たのは初めてだった」