― ずっと好きだった人 ―
6

◇様子見

 

 家は慰謝料代わりに譲り受けた家に今も現夫の誠二と暮らしている貴理子。


  なにおかいわんや……
そんな貴理子の元へ……
昔住んでいた家へ……

仕事の出先からの途中で元夫の正義が立ち寄る。



          ◇ ◇ ◇ ◇


 驚きながらもにこやかに出迎えてくれる貴理子に手応えを感じる正義。



「どうしたの?
 結婚して今は幸せの絶頂なんでしょ?
  今更惚気られても私困るわ~、ふふっ」



「いや……っ……」


「実はね、私……離婚を受けけ入れた日の2、3日前だったかな
見に行ったのよ」


「?」


「うんもう~、あなたの想い人今の奥さんよぉ。
 遠目から見ることができたの。

 共通の友だちにたあなたの想い人はたぶんその女性だろうって
教えてもらって。

 すんごい綺麗な人だったわ。
 
 こりゃあわたしじゃあ叶うわけないって、すっぱりあきらめついたの。

 諦めはつけたけど……今だから言うけどあなたのことが恋しくて
何日も泣いて暮らしたわ」




――――― そう明るく朗らかに当時の事を語る貴理子は

『だけど、捨てる神あれば拾う神ありってほんと。

 私も再婚しちゃった。びっくりでしょ?

  しかもおばさんなのにむちゃくちゃ若い旦那さんなのよ。

 一番びっくりしてるのがわ・た・し。ふふ。

 今は大事にしてもらって幸せよ。♡』―――――



と話を続け、その勢いで正義の惚気を聞かせてもらい、自分のほうの
お惚気なんかも聞かせてやろうなんて思っていたのに。




 正義の惚気話を聞くことも自分の幸せな話をすることも……
そのような機会が訪れることはなかった。



 だって
『諦めはつけたけど……今だから言うけどあなたのことが恋しくて
何日も泣いて暮らしたわ』


と一呼吸おいて次の話に移ろうとしたところで元夫に遮られてしまったから。


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