極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
大河と結婚したあとも、瞳子はオフィス フォーシーズンズに所属し、MCの仕事を続けている。
リピートで依頼を受けることが多い為、旧姓の間宮のまま名乗っており、今回のクラシックコンサートの司会も、何度もお世話になっている楽団とホールから直々に依頼を受けた。
昨日、今日、明日と三夜連続のコンサートで、明日はクリスマスイブにちなんだプログラムとなっている。
舞台袖で生演奏を堪能し、これでお給料を頂くなんてなんだか申し訳ないと思いながら、瞳子は精一杯司会を務めた。
「お疲れ様でした。本日もありがとうございました」
終演後、舞台袖に戻って来たマエストロに挨拶する。
「おう!まみちゃん、お疲れ様。今日も美しかったよー。明日もよろしくね」
「はい!こちらこそ、よろしくお願いします」
エネルギッシュな50代のマエストロは、瞳子に軽く手を挙げると颯爽と控え室に向かう。
次々と他の楽団員達も戻って来た。
「お疲れ様でした。ありがとうございました」
一人一人に挨拶していると、バスクラリネット奏者の男性が瞳子の前で立ち止まった。
「お疲れ様でした。ねえ、ひょっとして間宮さん、結婚したの?」
そう言って瞳子の左手に目を落とす。
薬指には、大河から贈られた結婚指輪が光っていた。
ダイヤモンドがぐるりと一周するエタニティリングはキラキラと輝き、さり気なく隠そうとしてもどうしても目立ってしまう。
「あ、はい。今年の春に」
「そうだったんだね!おめでとう」
「ありがとうございます」
控えめに答えて頭を下げた時、カシャン!と男性の手からリードケースが落ちた。
「おっと!しまった」
「あ、私が」
大きな楽器を抱えて拾おうとする男性に代わり、瞳子がしゃがんでケースを拾う。
「割れてないといいんですけど」
そう言いながら立ち上がった瞬間、グキッと右足首をひねってしまった。
一瞬顔をしかめてから、笑顔を取り繕って男性にケースを手渡す。
「どうぞ」
「ありがとう」
男性が立ち去ってから、瞳子は恐る恐る右足を踏み出してみた。
ズキッと痛みが走り、思わず壁に手をついて寄りかかる。
「間宮さん?どうかした?」
呼ばれて顔を上げると、スーツ姿のステージマネージャーの川上が心配そうに駆け寄ってきた。
「いえ、何でもありません」
「そんなことないでしょ?足をひねったんだね?」
「あ、はい。すみません、ハイヒールは履き慣れてなくて」
「謝らなくていいから。コンサートの為に衣装着てくれてるんだし。それより、歩ける?」
「はい、大丈夫です」
咄嗟にそう答えるが、痛みはジンジンと酷くなっていくばかりだ。
そんな瞳子の様子を見て、川上は手を差し出した。
「掴まって」
「いえ、あの。本当に大丈夫ですから。川上さん、まだお仕事残ってますよね?」
「コンサートは無事に終わったから大丈夫。片付けは他のスタッフに任せられるよ。控え室まで行こう。早く冷やした方がいい。明日もステージあるんだしね」
「あ、そうですね」
瞳子は川上の手を借りて、右足をかばいながら控え室に戻った。
「待ってて。すぐに戻るから」
瞳子をソファに座らせると川上はそう言い残して退室し、救急箱と氷嚢を持って戻って来た。
リピートで依頼を受けることが多い為、旧姓の間宮のまま名乗っており、今回のクラシックコンサートの司会も、何度もお世話になっている楽団とホールから直々に依頼を受けた。
昨日、今日、明日と三夜連続のコンサートで、明日はクリスマスイブにちなんだプログラムとなっている。
舞台袖で生演奏を堪能し、これでお給料を頂くなんてなんだか申し訳ないと思いながら、瞳子は精一杯司会を務めた。
「お疲れ様でした。本日もありがとうございました」
終演後、舞台袖に戻って来たマエストロに挨拶する。
「おう!まみちゃん、お疲れ様。今日も美しかったよー。明日もよろしくね」
「はい!こちらこそ、よろしくお願いします」
エネルギッシュな50代のマエストロは、瞳子に軽く手を挙げると颯爽と控え室に向かう。
次々と他の楽団員達も戻って来た。
「お疲れ様でした。ありがとうございました」
一人一人に挨拶していると、バスクラリネット奏者の男性が瞳子の前で立ち止まった。
「お疲れ様でした。ねえ、ひょっとして間宮さん、結婚したの?」
そう言って瞳子の左手に目を落とす。
薬指には、大河から贈られた結婚指輪が光っていた。
ダイヤモンドがぐるりと一周するエタニティリングはキラキラと輝き、さり気なく隠そうとしてもどうしても目立ってしまう。
「あ、はい。今年の春に」
「そうだったんだね!おめでとう」
「ありがとうございます」
控えめに答えて頭を下げた時、カシャン!と男性の手からリードケースが落ちた。
「おっと!しまった」
「あ、私が」
大きな楽器を抱えて拾おうとする男性に代わり、瞳子がしゃがんでケースを拾う。
「割れてないといいんですけど」
そう言いながら立ち上がった瞬間、グキッと右足首をひねってしまった。
一瞬顔をしかめてから、笑顔を取り繕って男性にケースを手渡す。
「どうぞ」
「ありがとう」
男性が立ち去ってから、瞳子は恐る恐る右足を踏み出してみた。
ズキッと痛みが走り、思わず壁に手をついて寄りかかる。
「間宮さん?どうかした?」
呼ばれて顔を上げると、スーツ姿のステージマネージャーの川上が心配そうに駆け寄ってきた。
「いえ、何でもありません」
「そんなことないでしょ?足をひねったんだね?」
「あ、はい。すみません、ハイヒールは履き慣れてなくて」
「謝らなくていいから。コンサートの為に衣装着てくれてるんだし。それより、歩ける?」
「はい、大丈夫です」
咄嗟にそう答えるが、痛みはジンジンと酷くなっていくばかりだ。
そんな瞳子の様子を見て、川上は手を差し出した。
「掴まって」
「いえ、あの。本当に大丈夫ですから。川上さん、まだお仕事残ってますよね?」
「コンサートは無事に終わったから大丈夫。片付けは他のスタッフに任せられるよ。控え室まで行こう。早く冷やした方がいい。明日もステージあるんだしね」
「あ、そうですね」
瞳子は川上の手を借りて、右足をかばいながら控え室に戻った。
「待ってて。すぐに戻るから」
瞳子をソファに座らせると川上はそう言い残して退室し、救急箱と氷嚢を持って戻って来た。