極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「こんばんは。お待たせ」

翌日。
ミュージアムが閉館して片付けも終わった夜の8時半。

安藤はミュージアムのエントランスで吾郎と待ち合わせた。

「都筑さん、こんばんは。今日はよろしくお願いします」
「ああ。どうぞ、入って」
「はい」

誰もいなくなった館内を、安藤は吾郎について歩いていく。

「今は真っ暗だけど、すぐ明るくなるから。ここで少し待っててくれる?」
「はい、分かりました」

大ホールに着くと、吾郎は安藤を部屋の真ん中に促してから、ドアの向こうに消えた。

シン…と静まり返った暗いホールにポツンと佇み、安藤が少し心細くなった時、サーッと光が差し込むように、ホールが群青色に染まり始めた。

「わあ、綺麗…」

思わずうっとりと天井を見上げる。

やがて無数の星がまたたき、スッと流れ星が降り注いだ。

夏の星座と流星群。

美しく広がる満天の星に、言葉もなく魅入っていた時だった。

「アン!」

可愛い鳴き声がして、安藤は思わず振り返る。

「え、トオルちゃん?!」
「アン!」

間違いない。
一目散に駆け寄ってくるのは、会いたくて堪らなかった可愛いトオルだった。

「トオルちゃん!」
「アンアン!」

飛びついてきたトオルを、安藤はひざまずいてギュッと胸に抱きしめる。

「トオルちゃん、やっと会えた!」

頬ずりして頭をなでると、トオルもぺろぺろと安藤の頬を舐めた。

「トオルちゃん、見て。綺麗な星空ね」
「アン!」
「ふふっ。いつまでもここにいたくなっちゃうね」

胸にしっかりとトオルを抱き、目を輝かせて星空を眺めている安藤を、吾郎は少し離れた所から優しく見つめていた。
< 114 / 141 >

この作品をシェア

pagetop