極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「うわ、もう完全に出来上がってるね」

敷地内にピカピカの街が誕生しているようで、吾郎は目を奪われる。

「そうなんです。ご入居も間もなく始まりますよ」

そう言って安藤は、吾郎とトオルをキャンセル住戸に案内する。

そこは透達の新居の隣の棟で、日当たりも抜群だった。

門扉を開けると、ポーチの片隅に小さな水道と洗い場がある。

「ここでトオルちゃんの足を洗えますよ」
「へえ!それはいいな」
「はい。1階のエントランスの裏側にも、洗い場があります。この棟はペットと一緒に住むことを考えてデザインされたお部屋なんです」

玄関を開けると、ウォークインシューズクローゼットには、リードを掛けるフックやキャリーバッグを置く棚もあった。

「さあ、ここがリビングですよー」

安藤がドアを開けると、明るく広い部屋が続いていた。

カウンターキッチンは、トオルが入ってしまわないよう、ゲートがついている。

そしてリビングの向こうには芝生の庭が広がっていた。

「おおー、気持ちいいな。トオル、早速遊ぶか」
「アン!」

吾郎がトオルを芝生に下ろすと、トオルは寝転がり、コロンコロンと身体を揺らして芝生の感触を楽しんでいる。

「可愛い!トオルちゃん。気に入ってくれたかな?」
「アンアン!」
「ふふっ、良かった」

吾郎はウッドデッキに安藤と並んで座り、トオルの楽しそうな様子を見守る。

「都筑さん。私、少し都筑さんに連絡してない時期があったじゃないですか」
「ああ、うん」

初めてドッグランに遊びに行った時の、気まずい雰囲気を思い出す。

「その間、どうしてだか分からないけど、とにかく寂しくて仕方なかったんです」
「トオルに会えないから?」
「それはまあ、そうですけど、都筑さんともお話したくて。でもなんて言って連絡を取ればいいのか、きっかけもなくて。だからミュージアムに行ったのは、また都筑さんに会えたらいいなって邪念もあったんです。ごめんなさい」

そう言って安藤は、ペコリと頭を下げた。

「いや、俺も会えて嬉しかった。来てくれてありがとう」

吾郎は素直な気持ちを口にする。
安藤も嬉しそうににっこり笑った。
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