極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
安藤達を起こさないよう、吾郎は静かに片付けを進める。

キッチンとリビングの作業が終わり、吾郎はダイニングテーブルでコーヒーを飲みながら、なんとなく部屋を見渡した。

新築の綺麗な部屋は、日当たりも良く、リビングがとても広い。

のどかで平和な休日の午後。
ソファでスヤスヤとお昼寝する安藤とトオル。

ふいに吾郎は、この光景がこの上なく幸せなものに感じられた。

(ずっとこんな毎日が続いたらいいのに…)

18歳で実家を出てから、ずっと一人暮らしをしてきた。

仕事から帰ってくると、いつも部屋は真っ暗で空気も冷たい。

休日もただゴロゴロしながら、なんとなくやり過ごすだけ。

それが今は…

「ただいまー」と玄関を開けると、トオルが、アン!と笑顔で喜んでくれる。
夕飯を食べるのも、トオルとおしゃべりしながら。
寝る時だって、トオルと一緒だ。

休日には、楽しそうに駆け回る安藤とトオルを微笑ましく眺める。

毎日がかけがえのない、大切なものに思えた。

(もう二度と以前の生活には戻れない)

吾郎はそう確信する。

ただ…
こんな毎日を続けるにはどうすればいいのか、その答えが分からなかった。
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