極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「恋…って、なんだ?」

オフィスでポツリと呟いた吾郎に、大河と洋平はガタッと椅子を揺らして仰け反る。

「こ、こ、こい?吾郎、それって、池の中を泳いでる魚のことじゃないよな?」
「違う。恋愛の話だ」
「ヒーッ!恋愛?吾郎が、恋愛?!」

思わず大河は洋平と身を寄せ合う。

「どうしたんだ?吾郎」
「何があった?変な物でも食べたとか?」
「ちがわーい!」

そんなやり取りを見守っていた透が、おもむろに口を開く。

「吾郎。恋ってなんだ?って考えることが、既に恋に落ちてるって証拠だよ」

大河と洋平は、またしてもヒョエー!とおののく。

「透。お前、真顔でそんな名言を…?」
「ゲームのやり過ぎで、恋愛マスターにもなっちゃったのか?」

透は、まあね、と妙に気取ったポーズを取る。

「恋に落ちるってさ、言葉じゃ説明出来ないんだよ。知らず知らずのうちに、頭の中に相手の顔が思い浮かぶ。気がつけば、その子のことばかり考えちゃう。むしろそれこそが純粋で本物の恋なんだ」

はあ…と、3人は気の抜けた返事をする。

「大河や洋平だってそうだったんじゃない?気づいた時には、彼女のいない生活は考えられなくなってた。ただ会いたいって、毎日そればかり考えちゃってた。そうじゃない?」

真剣に問いかけられ、大河と洋平は「いや、あの…」としどろもどろになる。

「洋平はともかく、奥手な大河がよくアリシアと結婚出来たもんだよ。良かったねー、大河」

すると大河は、しみじみと頷く。

「ああ、良かった。本当に良かった」
「でしょ?」

最後に透は、ポンと吾郎の肩を叩いた。

「だからさ、吾郎も絶対に手を離しちゃダメだよ」
「…誰の?」
「今、吾郎が思い浮かべた人!」

その時、吾郎の頭の中には、笑顔の安藤とトオルが思い浮かんでいた。
< 123 / 141 >

この作品をシェア

pagetop