極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「わあ、続々とお引っ越しが始まってますね」

また週末が来て、吾郎は安藤と一緒にマンションの敷地にあるドッグランに向かっていた。

整備された綺麗な街並みに、引っ越し業者のトラックが整然と並んでいる。

「だんだん賑やかになってきたな」
「ええ。全戸入居が完了すると、住民の方々向けに色々なイベントも企画しているんです」
「へえ、例えば?」
「それこそ、ペットを飼っているご家族の集まりだったり、お子さんがいるご家庭、趣味が合う方々の集まりとか。とにかく皆様にここでの生活を楽しんでいただけるよう、お手伝いさせてもらえたらと思っています」
「そうなんだ。君は他の部署に異動したのに?」
「そうですけど、このマンションに携わったのは事実ですので。最後まで責任持って、ここでの生活を安心して気持ち良く始められるように、皆様をサポートいたします。あ、もちろん都筑様も」

あはは!と吾郎は思わず笑う。

「ありがとう。キャンセル住戸を紹介してくれただけで、本当に感謝してる。トオルも俺も、ここでの暮らしが楽しくて仕方ないよ」
「本当ですか?良かった!」

安藤は心底嬉しそうに、吾郎を見上げてにっこり笑う。

吾郎は思わずドキッとして、安藤の笑顔から目が離せなくなった。

(いつの間にこんなに俺に気を許してくれるようになったんだろう。出逢った頃は、表情も固くてうつむいてばかりいたのに)

思い返せば、少しずつ少しずつ、二人の距離が近づいてきた気がする。

いや、確実に近づいている。

ファミレスで、ロボットのワンちゃんに一緒にはしゃいだり。
トオルを抱いて、嬉しそうに満面の笑みを見せてくれたり。
部屋で無防備にうたた寝をしたり。
美味しいお弁当を作ってくれたり。

少し振り返っただけでも、たくさんの楽しい思い出が蘇る。

(こんな日々が、これからもずっと続いて欲しい)

吾郎はただ純粋にそう願っていた。
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