極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「いつ好きになったのかは分からない。最初は、真面目な学級委員みたいな子だなって思ってた。慣れない仕事に一生懸命で、大丈夫かな?って心配もしてた。酔っ払うと面白くて、ああ、君は覚えてないだろうけどね。なんだか意外な一面が見られて楽しかったよ。それに、そう!ファミレスに行った時。あれは本当に楽しかった。いい歳してはしゃいで、あんなふうに誰かと盛り上がるのも新鮮で。あの時には、もう恋に落ちていたのかもしれない。君がトオルと走り回っている無邪気な姿は微笑ましくて、トオルに見せる笑顔にドキッとして、優しくトオルをなでていると、ちょっとヤキモチ焼いたりして。君の口から原口さんの名前が出ると、年甲斐もなく焦った」

そう言って吾郎はふっと照れたように笑みをこぼす。

「トオルの彼女として週末に遊んでやって、なんて都合のいいこと言って、本当は俺が君に会いたかったんだ。こうやって俺の部屋で一緒にいると、居心地良くて心が安らぐ。思い返せば、もう既に恋人同士の関係だったと思う。だから次は結婚して欲しい。ずっと俺とトオルのそばにいて欲しいんだ」
「都筑さん…」

安藤の目から涙がこぼれ落ちる。

「私もです。あなたのことを、いつ好きになったのかは分かりません。最初はなんだか近寄りがたい人だなって思ってたけど、ワンちゃんって口にした時、意外過ぎてびっくりして。仕事の話をしている時は真剣で頼もしいのに、モデルルームで子ども達を相手にすると優しくて、時々タジタジになったりもしていて。私を眼鏡屋さんに連れて行ってくれたり、そう!ファミレスでは小学生の男の子みたいにはしゃいで。ふふっ、楽しかったですね。お客様との商談中も、都筑さんが温かく見守ってくださっているのを感じていました。いつの間にか都筑さんの存在そのものが、私の心の支えになっていたんだと思います。トオルちゃんと一緒に遊んでいる時の都筑さんは、明るくて温かくて。私もトオルちゃんに会いたいって言っておきながら、都筑さんにも会いたかったんです。こうやって一緒に過ごす週末がいつも楽しみで仕方なくて。だからずっとここで暮らしていきたいです。都筑さんと、トオルちゃんと一緒に」

吾郎は嬉しそうに笑って、そっと安藤を抱き寄せた。

「ありがとう。ずっと一緒に暮らしていこう。俺と結婚して欲しい、…莉沙」
「はい。私もずっと一緒にいたいです。…吾郎さん」

微笑みながら見つめ合い、ゆっくりと吾郎が顔を寄せた時だった。

「アン!」

二人の間にトオルが割り込み、莉沙の唇をぺろぺろ舐める。

「トオル…、頼むから空気読んでくれよ」

ガックリと肩を落とす吾郎に、莉沙が笑い出す。

「ふふっ、私のファーストキスはトオルちゃんに奪われちゃいました」
「なにっ?!」

吾郎は本気で憤慨する。

「トオルー!俺はお前にマジで嫉妬してるからな!」

トオルは『日本語分かりません』とばかりに、ひたすら莉沙の顔をぺろぺろと舐めている。

「おい!聞いてるのか?トオル」
「うふふ。じゃあトオルちゃん、抱っこね」

そう言ってトオルを胸に抱くと、莉沙は吾郎に顔を近づけて左頬にチュッとキスをした。

吾郎は顔を真っ赤にして固まる。

「ちょ、二人とも!俺をもてあそび過ぎだぞ?」
「そんなことないですよ。ね?トオルちゃん」
「アン!」

見つめ合うトオルと莉沙に、吾郎はムキーッとなる。

「トオル、俺の方がキス上手いんだからな!」
「やだ!なんてこと言うんですか?」

今度は莉沙が顔を真っ赤にする。

吾郎は莉沙の肩に手を置いて優しく笑いかけた。

「莉沙。幸せにするよ、莉沙も、トオルも」
「はい、吾郎さん」

二人は見つめ合うと、ゆっくりと目を閉じる。

吾郎は莉沙の背中に腕を回し、トオルごと抱きしめながらそっと莉沙の唇にキスをした。

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