極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「莉沙、そろそろ寝る時間だよ」
「はい、このお皿洗ったら行きます」

莉沙が引っ越して来て、すっかり二人と一匹の暮らしにも慣れた頃。

吾郎は毎晩密かに戦いを繰り返していた。

「お待たせしました」

パタパタと近づいて来た莉沙の肩を抱き、吾郎はゴクリと生唾を飲み込んでから、そっと電気のスイッチを消す。

リビングが暗くなった次の瞬間…

「アン!」

トオルの声が聞こえてきて、吾郎はガックリと肩を落とした。

「トオルちゃん、起きちゃった?」

莉沙はいそいそとサークルに近づき、トオルを抱き上げて戻って来る。

「吾郎さん、寝ましょうか」
「あ、うん。そうだな」

寝室に行くと、莉沙は当然のようにトオルを胸に抱きしめてベッドに横になる。

「トオルちゃん、おやすみなさい」
「アン!」

ふふっとトオルに微笑んでから、莉沙は顔を上げた。

「吾郎さんも、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」

(も?吾郎さん、も?俺は二番目か?)

布団に潜り込むと、吾郎はブツブツと不満そうに呟く。

(ちぇ!毎晩トオルに莉沙を取られちゃう)

いじけていると、小さく「吾郎さん」と莉沙の声がした。

え?と布団から顔を出すと、莉沙の顔がすぐ近くにあってドキッとする。

「ど、どうしたの?」
「しーっ!トオルちゃんが起きちゃう」

そう言って莉沙は自分の後ろを振り返る。

そこには身体を丸めてスヤスヤ眠るトオルがいた。

「トオルちゃん、やっと寝たの。あの、吾郎さん。くっついてもいい?」
「え…、ああ!うん、いいとも。よし、来い!」

両手を広げると、莉沙は嬉しそうに身を寄せてきた。

吾郎はギュッと莉沙を抱きしめる。

(はあ、ようやく俺のところに来てくれた)

何度も莉沙の頭をなでながら幸せを噛みしめた。

「トオルちゃんを抱っこするのも癒やされるけど、吾郎さんにギュッて抱きしめてもらうと、安心してすごくホッとするの」
「そうか。トオルよりも俺の方がいい?」
「んー、同じくらい」

ガーン…と吾郎は打ちのめされる。

「でもね、トオルちゃんごと私を守ってくれる吾郎さんが一番好き」
「そ、そうか!もちろん、俺はトオルのことも莉沙のことも、ずっと守っていくよ。誰よりも幸せにするから」
「うん!ありがとう」

にっこり微笑む莉沙に見とれてから、吾郎はゆっくりと莉沙の身体を抱き寄せる。

「莉沙…」

小さくその名を呟くと、莉沙はそっと目を閉じた。

無防備で可愛い表情に目を細め、吾郎は優しく莉沙にキスをする。

ん…と甘えるように吐息を漏らす莉沙を、吾郎はますます強く抱きしめた。

「大好きだよ、莉沙」
「私も。吾郎さん、大好き」

二人は何度も愛を囁いては、互いを抱きしめながらキスを交わしていた。
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