極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
その時ピアノの音色が止み、人々はピアニストを振り返って拍手する。

吾郎も振り返って、惜しみない拍手を送った。

立ち上がったピアニストはにっこりと微笑んで会釈してから、馴染み客らしい数人と軽く言葉を交わしつつこちらに歩いて来る。

やがて吾郎のいるカウンターまでやって来た。

えっ!と吾郎は目を見開く。

(も、もしや!彼女が俺の…?)

頭の中がフリーズし、身を固くしたまま横目で姿を追っていると、マスターがカウンターから出て来て彼女に声をかけた。

背の高いイケメンのマスターを見上げ、彼女は嬉しそうに微笑む。

(…あ、なるほど)

見つめ合う二人に吾郎は全てを察した。

やがてマスターが優しく彼女をハグし、耳元で何かを囁く。

彼女は幸せそうに微笑んでから、もう一度マスターを見つめ、STAFF ONLYと書かれたドアの向こうに消えた。
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