極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「よし!じゃあ1曲目の頭から」

マエストロがタクトを構え、皆も一斉に楽器を構える。

その場の空気がピリッと変わり、瞳子はコンサートの冒頭をイメージしながら耳を傾けた。

次の瞬間…
え?!と驚いて瞳子は顔を上げる。

聴こえてきたのは、全く別の曲。

(これは…メンデルスゾーンの結婚行進曲?)

どうして?と、急いでプログラムを確かめるが、どこにもその曲名は見当たらない。

事態を飲み込めないでいると、冒頭のさわりの部分だけで演奏は終わった。

「まみちゃん、結婚おめでとう!」

マエストロが笑顔で拍手し、次々に、間宮さん、おめでとう!と楽団員達もあとに続く。

「は?あの…」

瞳子は呆然としながら目をしばたかせる。

「間宮さん、結婚おめでとう!これは我々スタッフから」

そう言って川上が、綺麗な花束を瞳子に差し出した。

「えっと、あの?これは一体…」
「サプライズってやつだよ。まみちゃんの結婚を、みんなでお祝いしたくてな」

マエストロの言葉に、瞳子は信じられないとばかりに皆を見渡した。

誰もが笑顔で拍手してくれている。

「皆様、ありがとうございます。本当に驚いてしまって。とても嬉しいです。ありがとうございました」

頭を下げると、感極まって涙が込み上げてきた。

「おやおや、こんな美女を泣かせちゃったよ。俺って罪な男だなあ。あはは!」

マエストロがそう言うと皆も笑い出す。

「さっ!じゃあゲネプロやるぞ。まみちゃんを更に感動させてやろうじゃないの」
「はい!」

マエストロが表情を変えてタクトを構え、スッと振り始めると、圧倒されるような見事な演奏が始まった。
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