極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「皆様、メリークリスマス!」

アンダーソンの『そりすべり』で幕を開けたコンサート。

曲が終わって拍手が鳴り止むと、瞳子はステージの下手から現れて笑顔で挨拶する。

メリークリスマス!と客席からも返事が返ってきた。

「本日はウィンターコンサートにようこそお越しくださいました。わたくしは司会の間宮 瞳子と申します。どうぞよろしくお願いいたします」

お辞儀をしてからゆっくり顔を上げると、1階席中央に座っている大河とバチッと目が合った。

(やだ!大河さん、そんな正面の席に?)

一瞬、素に戻ってしまったが、慌てて笑顔でマイクを握り直す。

「3夜連続でお贈りしてきたこのウィンターコンサートも、いよいよ今夜が最後。クリスマスイブの本日は、聖夜にふさわしい名曲の数々をご用意いたしました。大切な方とご一緒に、どうぞ最後までじっくりとお楽しみください」

第一部はクリスマスにちなんだ聴きやすくロマンチックな曲を集め、休憩を挟んだ第二部は、瞳子の語りを交えたチャイコフスキーのバレエ組曲『くるみ割り人形』の演奏だった。

耳馴染みのある名曲の合間に、瞳子の優しい声で、主人公クララのお話が語られる。

ドレスをまとった美しい瞳子の姿に誰もが魅了され、うっとりと夢見心地になっていた。

ラストは素晴らしい演奏で華やかに締めくくられ、観客席から大きな拍手が起こった。

マエストロが瞳子の手を取ってエスコートし、前に歩み出た瞳子が深々とお辞儀をする。

観客はより一層の拍手を、惜しみなく瞳子に送っていた。
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