極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「海外旅行、ですか?」

その日の夕食で、早速大河は瞳子に話をしてみた。

「ああ。俺達が新婚旅行に行ってないのを、みんな気にしてくれてて。年明けにでも行って来いって」
「でも海外旅行ともなると、2、3日じゃ済みませんよね?大河さんをそんなに長く不在にさせるなんて…」
「俺がいなくても、あいつらなら大丈夫だ。何も心配ない」
「そうですけど…。私はそこまでして、海外旅行にこだわるつもりはないです。また2泊3日で神戸に行けたら、それで充分です」

瞳子はきっぱりと言い切る。
どうやら本当に海外旅行に憧れはないようだ。

「神戸はまた必ず行こう。でもそれとは別に、俺は瞳子と海外旅行に行きたいんだ。ゆっくり時間をかけて、二人で一緒に色んな所に行って、色んなものを見て、色んな気持ちを共有したい。ダメか?」

控えめに瞳子の顔を覗き込むと、瞳子は、うーん…と視線を外した。

「例えばどんな所?」
「瞳子が行きたい所ならどこへでも」
「んー、特に思いつかないです」
「じゃあ、フランスはどうだ?」
「フランス?」
「ああ。仕事で行った時、綺麗な景色を瞳子に見せたいって思ったんだ。あの時はまだ俺達、つき合ってなかったけど」
「私もあの時、大河さんに会いたくて堪らなかったの。今頃何してるのかな?って、毎日大河さんのこと考えてたんです」

瞳子…と、大河は言葉に詰まる。

「そんなに可愛いこと言われたら、今すぐ瞳子をフランスに連れて行きたくなる。よし、飛行機のチケット取ろう!」

いやいやいや!と、瞳子は必死に手を振って止める。

「大河さん、落ち着いて。ご旅行は計画的にって言うでしょ?」
「それ、何か違うぞ」
「そう?まあ、いいから。とにかくゆっくり考えてからにしましょ。ほら、泉さんももうすぐ出産でしょ?そしたら洋平さん、しばらくは家庭優先になるから、お二人と赤ちゃんの生活が落ち着いてから考えましょう」
「あー、確かにそうだな。分かった。日程は改めて考えるけど、フランスに行くのは決まりな?」

すると瞳子は嬉しそうに、うん!と頷く。

「瞳子、可愛い…。今すぐ連れて行きたくなる」
「もう、大河さん。1分前に戻って!」
「あはは!振り出しに戻ったな」
「ほんとに。無限ループですよ?」
「仕方ないだろ?瞳子が可愛い過ぎるんだから」
「また私のせいなのー?」

美味しい瞳子の手料理を味わいながら、大河は楽しそうに、あはは!と笑っていた。
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