極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「瞳子、おいで」

寝る前にベッドでパソコンをいじっていた大河は、寝室に入って来た瞳子に声をかける。

サイドテーブルにパソコンを置くと、瞳子がベッドに入るなり、大河は両腕を伸ばして瞳子を抱き寄せた。

瞳子は甘えるように大河に身を寄せて横たわる。

「電気消すよ?」
「うん」

暗くなった部屋で、ほのかな月明かりの中、大河は優しく瞳子の髪をなでながら幸せな気持ちに浸っていた。

(今、こうやって瞳子が俺の腕の中にいてくれることが、何より嬉しい)

出逢った頃の瞳子は、男性に触れられることに怯えていた。

どんなに好きになった相手でも、身体に触れられると恐怖が蘇ってしまう。
私は一生、普通の恋愛も結婚も出来ない、と嘆いていた瞳子。

(そんな瞳子が、俺と結婚してくれて、今もこうやって身を寄せてくれているなんて。俺は瞳子をちゃんと幸せに出来ているのだろうか。過去の恐怖は、全て消し去ることが出来たのか?瞳子は俺と一緒にいることに、無理したりしていないだろうか)

ふとそんな不安が頭をよぎる。
その時、大河さん、と瞳子が視線を上げた。

「ん?どうした?」
「うん、あのね。夕食の時大河さんが、新婚旅行の話をしてくれたでしょう?」
「ああ。それがどうかした?」
「あの時は私、別にいいのに、なんて思ってたけど、今になってすごく嬉しくなってきたの。私、大河さんと新婚旅行に行きたい」
「瞳子…」
「私ね、普通の恋愛は諦めて生きてきたの。でも大河さんと出逢えて、心から愛してもらって、今も優しく抱きしめてもらってる。すごくすごく幸せで…。大河さんと結婚出来ただけで、もう夢のように幸せなの。だからそれ以上のことなんて、何も望んでなかった。さっき大河さんに、一緒にフランスに行こうって言われて、そんなことまでしてくれなくてもって思ったけど、だんだん行きたくて堪らなくなって…。行ってもいいのかな?私。これ以上の幸せを望んでも、バチが当たったりしない?」

瞳子…と、大河は目を潤ませる。
< 29 / 141 >

この作品をシェア

pagetop