極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「え、ちょっと。おい、安藤!」

原口が肩を揺すると、スーと寝息が聞こえてきた。

「やれやれ、まったく…。都筑さん、本当に申し訳ありません。失礼なことを申しまして」
「いえ、大丈夫です。それにしても、大変なんですね、営業って」
「まあ、そうですね。向き不向きもあると思います。安藤は、総務部から営業部に異動になったばかりなんですよ。まだ1年も経ってないのに、いきなりこんな大きな物件を担当することになって、かなりのプレッシャーだと思います。私も気にかけてはいたんですけど、普段の彼女は真面目で控えめで、あまり本音を話すタイプではありませんでした。それがまさか、お酒を飲むとこうなるとは…」

吾郎は苦笑いして頷く。

「いつも溜め込んでた気持ちが開放的になったんでしょうね。でも良かったんじゃないですか?スッキリ話してくれた方が本音を聞けて」
「それはそうですが、都筑さんには散々失礼なことを…。本当に申し訳ありません」
「いやー、私なら気にしてません。なんならちょっと面白いもの見せてもらった気分です」
「そう言っていただけると助かります」
「あ、でも面白いものなんて言ったら、怒られちゃいますね。今のセリフは内緒で」
「分かりました。けど、多分本人は覚えてないと思いますよ?自分のあの、一人新喜劇を」
「あはは!あんなに面白かったのに?」
「ええ。いつものように、しれっと真面目な安藤に戻ると思います」
「うわー、ギャップがまた面白そう。次にお会いしたら、思い出し笑いしないように、気をつけます」

吾郎と原口は安藤が目を覚ますまで、男同士で語り合っていた。
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