極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
第十章 尻尾フリフリのトオルちゃん
内海不動産に関するコンテンツは、着々と制作が進んでいた。

吾郎は何度も内海不動産の本社に足を運び、原口や木谷、安藤と打ち合わせを重ねる。

安藤といえば…
いつぞや酔っ払って一人新喜劇をしたことは、全く覚えていないらしい。

次に会った時は、いつもと変わらず黒スーツに眼鏡で、硬い表情の真面目な彼女に戻っていた。

吾郎がチラリと原口に目を向けると、原口は苦笑いしながら肩をすくめてみせたことから、なるほど、覚えていないんだな、と吾郎は独りごちた。

仕事の話はどれもスムーズに進み、瞳子のナレーションを入れた紹介映像は、上質でまさにこのマンションにふさわしいと喜ばれ、ARやMRのコンテンツも、これは楽しい!と盛り上がった。

モデルルームの内装工事も終わり、いよいよ機械の設置作業に入る。

この時ばかりは吾郎だけでなく、大河や透も現地に赴いた。

モデルルームオープンまであと1週間と迫ると、吾郎はほぼ毎日顔を出し、原口達と最終確認をしたり、他のスタッフがお客様に説明出来るよう、プレゼンテーションをした。

そしてついに3月の半ば、内海不動産が手がける大規模新築分譲マンションの現地モデルルームがオープンした。
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