極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
モデルルームは亜由美の貸し切り状態で、まずは紹介映像から始めた。

「わあっ!このナレーション、瞳子さんでしょ?はあ、癒やされるー」

亜由美は両手を広げてうっとりと目を閉じる。

吾郎は小さく、プッと吹き出した。

(透とおんなじだよ。さすがは似た者夫婦)

MRなどのデジタルコンテンツも、一つ一つ感激したように、興奮気味に吾郎にしゃべりかけてくる。

「すごい!なんて素晴らしいの。さすがはアートプラネッツ!日本が世界に誇る技術!私の自慢の旦那様!」

はいはい、と吾郎は聞き流す。

ひとしきりコンテンツを紹介すると、いよいよ商談のテーブルで、安藤は亜由美と向かい合って座った。

「初めまして。内海不動産の安藤 莉沙と申します。よろしくお願いいたします」

丁寧に名刺を差し出す安藤に、亜由美はにっこり笑いかける。

「こちらこそ。莉沙さんはおいくつなんですか?」
「は?わたくしですか?25歳です」
「わあ、私と2つ違い!ちょうどいいですね。マダムプラネッツに入りませんか?」
「は?あの…」

ただでさえ緊張しているところに、意味不明なことを言われて、安藤は固まっている。

吾郎は、ゴホン!と咳払いをしてから亜由美に近づいた。

「亜由美ちゃん、頼むから普通にして」
「えー?普通にしてますよ?私」
「亜由美ちゃんは普通でも、モデルルームに来たお客様としては普通じゃないよ」
「そうなんですかー?変なの」

ガクッと吾郎は首を折る。

「じゃあ、吾郎さんも一緒にいて。ほら、お隣どうぞ」

無邪気にポンポンと椅子を叩く亜由美に、吾郎はしかめっ面になる。

「あの、よろしければ都筑さんもどうぞ」

原口に言われて、吾郎は仕方なく亜由美の隣に座った。
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