極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「やれやれ、やっと終わった。皆様、お騒がせしました」

原口が周りの客に会釈すると、皆は微笑んで片手を挙げる。

「都筑さんも、すみません。やっぱり安藤には飲ませちゃいけませんでしたね」
「いえいえ。私はまたしても楽しませてもらいましたよ」

なにせ吾郎の頭の中では、あのロボットワンちゃんがウィーンと動いていたのだから。

「そうですか?そう言っていただけると。それにしてもあの安藤が、こんなに彼氏とラブラブだとは。あ、だから最近コンタクトにしたんですかね?」
「さあ、どうなんでしょうね?」

としか言いようがない。

「でもなんか、ちょっと寂しくなってきました、俺」

原口がポツリと呟く。

「ずっと安藤のことをそばで見てきて、大丈夫かなって毎日心配して…。けど、俺なんかより近くで見守ってくれる恋人がいたんですね。そっか、そうだったのか」

自虐的にフッと笑うと、原口はグラスを一気に煽った。

(原口さん、もしかして彼女のことを…)

好きになったのか?
そこまでいかなくとも、気になる存在にはなっているのだろう。

吾郎はそっと横目で原口の様子をうかがう。

(もしそうなら、伝えるべきか?トオルちゃんの正体を)

そうすれば、なんだ!と原口は安心するだろう。

だがどうしてか、結局そのあとも吾郎は原口にそれを伝えないままだった。
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