極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
翌日からは、気の向くままに観光地を訪れた。

エッフェル塔や凱旋門、セーヌ川の他に、宮殿や地方の古城、美術館巡りなど。

瞳子はどこへ行っても感激して目を輝かせ、大河は景色と調和する瞳子の美しさに、シャッターを押す手が止まらなかった。

ヴェルサイユ宮殿では豪華絢爛な天井を見上げてうっとりする瞳子に、「もはやここは瞳子の為の宮殿か?」と大河は真顔で呟く。

瞳子は恥ずかしさのあまり、急いで大河の手を引いてその場を立ち去った。

ルーヴル美術館、オルセー美術館、ポンピドゥー・センター、そしてオランジュリー美術館へも足を運ぶ。

ルーヴル美術館でも大河は、「この『サモトラケのニケ』って、瞳子のイメージにぴったりだな」と豪語し、またしても瞳子は慌てて大河の手を引いた。

そんな中、瞳子はモネの絵画を観て感無量になる。

「モネの『日傘をさす女』って、右向きと左向きがあるんですね。私、左向きの方しか知りませんでした。それにこの『かささぎ』、なんて素晴らしいのかしら」
「ああ、そうだな。さすがは『光の画家』と呼ばれたモネだ。伝統的は手法からは脱却しつつも、光の捉え方や色彩感覚が秀逸だと思う」

オランジュリー美術館で念願の『睡蓮』を観た瞳子は、高さ約2m、長さ約91mもの作品に言葉を失って目を見張るばかりだった。

「もう、ただただ圧倒されます。私、ずっと瞬きするのを忘れてて、涙が滲んできちゃった」

目尻の涙を拭いながら照れたように笑う瞳子に、大河は目を細めて微笑んだ。
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