極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
19世紀後半のパリ都市改造計画の一環として、ナポレオン3世の命を受けて建築され、1875年に完成したネオ・バロック様式の『オペラ・ガルニエ』

タクシーで向かう車中、大河は瞳子に詳しく話して聞かせる。

「並み居る世界的建築家をしのいで、171の公募の中からコンペティションを勝ち取ったのが、当時無名だった35歳のシャルル・ガルニエなんだ」
「そうなのね。オペラ・ガルニエは『オペラ座の怪人』の舞台でもあるのよね?」
「ああ。劇場の中央にあるシャンデリアは、重さ7トンのブロンズとクリスタルでデザインされているんだけど、過去に落下したこともあったんだ。そこから『オペラ座の怪人』のワンシーンが生まれたらしい」
「えっ!7トンもあるの?また落っこちたりしない?」
「ははっ!今は大丈夫だよ。そのシャンデリアの上には、シャガールの『夢の花束』っていう天井画があるんだ。モーツァルトの『魔笛』やチャイコフスキーの『白鳥の湖』とか、14人の著名な作曲家とその作品を題材にして描いたらしい。凱旋門やエッフェル塔、オペラ・ガルニエも散りばめられているんだって」
「そうなの?うわー、じっくり見てみなくちゃ」

やがてタクシーの前方に、ライトアップされた宮殿そのものの建物が見えてきて、瞳子は思わず息を呑む。

「なんて綺麗なの…」

先にタクシーを降りた大河は、続いて降りる瞳子に手を差し伸べる。

二人は肩を並べて建物を見上げた。

正面から見たファサードはギリシャ神殿を思わせ、古代ギリシャの建築手法であるコリント式の柱が並んでいる。

柱の下には、モーツァルトやベートーヴェン、ロッシーニなどの作曲家の胸像があった。

しばし見とれてから、大河が瞳子に声をかける。

「じゃあ行こうか」
「ええ」

大河は左腕に瞳子を掴まらせると、ゆっくりとエントランスに向かった。
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