極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
「わあ…、すごい」

モザイクタイルと天井の彫刻が美しいエントランスに足を踏み入れた途端、瞳子は目を見張って言葉を失う。

円形のロビーを抜けた先には、高さ30mにもおよぶ吹き抜けの中央広間と、白い大理石の大階段『グラン・エスカリエ』

美しさに圧倒されつつ、うっとりと眺めてから、瞳子は夢見心地で階段を上がる。

大河は少し後ろから、何枚も瞳子の写真を撮った。

あまりにも絵になる瞳子の姿に、何かの撮影だと思い込んだ周りの人が、サーッと遠ざかっていく。

おかげで大河は、きらびやかな背景に見事に調和する美しい瞳子の姿を、たくさん写真に収めることが出来た。

大階段下の両側には、光のブーケを持つ2体の彫刻。

「彫刻に照明を持たせる演出でガス灯を使っていたら、何度も火災が発生したんだ。だから彫刻の下には、火を食べるトカゲのサラマンダーをお守りとして置いているんだって」
「そうなのね、ふふふ」

大河の解説のおかげで、瞳子はあちこちに目を向けながら楽しく観て回った。

そして一番の見どころは、やはり『グラン・フォワイエ』

高さ18m、奥行き154m、幅は13mもある古典様式のロビーで、鏡と窓の効果で空間の広がりを演出している。

パノラマな空間に余すことなく描かれた天井のフレスコ画やまばゆいシャンデリア、キラキラと輝く黄金の装飾など、とにかくどこを取っても豪華絢爛。

その美しさは、ベルサイユ宮殿の「鏡の間」をしのぐと言われるのも頷けた。

最後にようやく二人はホールに入る。

イタリア式の馬蹄形をした劇場ホールは5階まであり、ズラリと並んだ深紅のベルベットの座席とゴールドの装飾で、瞳子の心は一気にときめいた。

「なんて素晴らしいの。もうこの劇場こそが芸術作品よね。こんな豪華な空間でバレエを観られるなんて、本当に贅沢だわ」

開演を待つ間も、瞳子は天井を見上げてうっとりと目を輝かせていた。
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