極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
第十八章 モン・サン・ミッシェル
「瞳子、今日はいよいよモン・サン・ミッシェルだな」
「うん!やったー!」

翌日。
ホテルで朝食を味わうと、二人は早速1泊分の着替えをバッグに詰めて準備をした。

出かける前にフロントに立ち寄り、念の為、今夜は外泊することを伝える。

そう、今夜はモン・サン・ミッシェルの島内に宿泊することにしていた。

フランス旅行が決まった時、瞳子が1番に行ってみたいと口にしたのがモン・サン・ミッシェル。

大河はそんな瞳子に、島内で1泊しようと提案して、ホテルを予約していた。

わくわくしながら、まずはモンパルナス駅に向かう。

高速列車のTGVでレンヌを目指し、そこからバスに乗り換える予定だった。

TGVの車内では、大河が撮ったたくさんの写真を見返しながら、思い出話で盛り上がる。

「あ、これ、ロワールのシャンボール城よね。フランス式庭園がそれはもう素晴らしかったなあ」
「ああ、そうだな。瞳子がどこぞの国の王女様にしか見えなかった」
「ん?大河さん、お庭の話よね?」
「そうだよ。瞳子の庭のな」
「はいー?」

噛み合わない会話をしつつ、あっという間に乗り換えのレンヌに到着した。

バスの時間まで少し休憩することにして、瞳子はコーヒースタンドのカウンターへ行く。

「Bonjour, Comment vas-tu ? (こんにちは。ご機嫌いかが?)」

「Très bien, merci. Deux cafés s'il vous plaît (元気です、ありがとう。コーヒーを2つください)」

大河の言った通り、いつの間にか瞳子は、よく使う簡単なフランス語はいくつか覚えていた。

「はい、大河さん。コーヒー」
「お、ありがとう」

ホッとひと息つきながら、瞳子は街の様子に目を向ける。

「ここも素敵な所ですね。ちょっと中世の雰囲気が残っていて」
「ああ、そうだな。レンヌは、中世にはブルターニュ公国の首都として栄えた町で、歴史的建造物も多い。ここから少し歩くと、木組みの建物が並ぶ旧市街地に出るよ。行ってみる?」
「え、でも、そしたらバスの時間に間に合わなくなるんじゃない?」
「それならレンタカーに変更だ。ほら、行こう」

大河は瞳子の手を取ると、歩きながら話し出す。

「せっかくの旅行なんだ。気の向くままに楽しまなきゃ、もったいないよ」
「そうですよね。ふふ、良かった。大河さんが、予定調和の旅が好きってタイプじゃなくて」
「旅行はその時のその場の感覚で行動するのが好きなんだ」
「私もです。だからツアーとかは苦手で…。ゆっくり見たいのに、もう時間です!とか言われるとガッカリしちゃう」
「俺もだよ。フラストレーションが溜まるし、旅行した気にならない」
「ですよね」

二人は時間を気にせず、見たい所を好きなだけ回ることにした。
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