極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
翌朝。
朝食を食べ終えると、二人はまだ静かな修道院をゆっくりと観て回った。

11世紀から16世紀にかけて建てられた、ロマネスク様式とゴシック様式が融合した美しい造りの修道院。

神秘的な教会や、回廊と中庭が見事な『ラ・メルヴェイユ』と呼ばれる居住区。

他には誰もいない静かな修道院は厳かで神聖な気持ちになる。

まるで中世にタイムスリップしたように、どこを切り取っても絵になる街で、大河は誰にも邪魔されずに、思う存分瞳子の写真を何枚も撮った。

後ろ髪を引かれる思いでパリに戻り、たくさんのお土産と忘れられない大切な思い出を胸に、大河と瞳子は、必ずまた来ようと約束してフランスを発った。

(楽しかったなあ、フランス。だけどその分、すごく寂しい)

帰りの飛行機の中で瞳子がじっと窓の外を眺めていると、大河が優しく肩を抱き寄せて微笑んでくれる。

(そうだ、私のそばにはいつだって大河さんがいてくれる。私の1番大切な場所は、大河さんの隣なんだ)

そう思った途端、瞳子の心はじんわりと温かくなった。

大河を見上げてにっこり微笑むと、大河は瞳子の頭に腕を回して自分の肩にもたれさせる。

ポンポンと頭をなでられて、瞳子は身体中に幸せを感じながら大河に身を寄せていた。
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