極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
第十九章 お前がいてくれるなら
「うわー、もうこんなに売れたの?」

久しぶりに内海不動産のモデルルームを訪れた吾郎は、壁に貼られた部屋番号の上のバラの数に驚く。

建築工事も目に見えて進んでおり、1つの街がもうじき出来上がろうとしていた。

「はい!販売もついに最終期に入りました」

安藤が嬉しそうに声を弾ませる。

「私が担当させていただいた方も、何組かご成約をいただきまして」
「そうなんだ!がんばってるね」
「都筑さんのお力添えのおかげです。本当にありがとうございます」
「いやいや、俺なんか何も。それより、かなりマンションの工事も進んだようだから、映像やデジタルコンテンツもブラッシュアップしようと思って」
「ええ?!よろしいのですか?」
「もちろん。原口さんと木谷さんにも相談したいんだけど」
「かしこまりました。すぐに呼んで参りますね」

吾郎は、タタッとバックヤードに向かう安藤の後ろ姿を見送る。

(少し会わなかった間に、なんかちょっと雰囲気変わったな)

久しぶりに見る安藤は生き生きとしていて、自信に満ちた明るい表情だった。

(仕事が上手くいってるんだろうな。良かった)

以前は真面目な学級委員のように、常に真顔でカリカリとメモを取っていた安藤が、今は顔を上げてにこやかに話をしてくれる。

眼鏡をやめ、ひとつ結びだった髪型も、後ろでゆるくシニヨンにまとめていた。

(そうするともう前みたいに、酔っ払った一人新喜劇は見せてくれないのかな?)

そう思うと、なんだか少し残念な気もする。

またいつか見てみたい、と口元を緩めていると、バックヤードから原口と木谷を連れて安藤が戻って来た。
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