極上の彼女と最愛の彼 Vol.3
第二十章 大好き…
「かんぱーい!」

内海不動産のメンバーに混じって、吾郎も完売を祝う打ち上げの店に呼ばれていた。

「都筑さん、この度は本当にありがとうございました!」

原口がビール瓶を手に挨拶に来る。

「あ、車なのでノンアルコールで。こちらこそ、こんなにも大きなプロジェクトにお声掛けいただき、ありがとうございました」
「いやー、アートプラネッツさんのデジタルコンテンツは素晴らしいですね。今後もぜひ、お力添えをお願いいたします」
「はい。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」

木谷や安藤とも、お礼を述べて乾杯をする。

まともに話が出来たのは、せいぜい最初の1時間だけだった。

「トオルちゃん!私、どうしてもあなたに会いたいの。あの笑顔が忘れられなくて、会えない間もずっと思い出しちゃうの。トオルちゃん!今すぐ会いに行きたい!」

安藤…と、原口が眉間にしわを寄せる。

「お前な、そんなに赤裸々に叫ぶな。会社のみんなに聞かれるぞ?」
「誰にどう思われたっていいんです。トオルちゃんさえいてくれれば、私はそれで!」
「分かった、分かったから!それならお前はもう上がれ。会いに行って来いよ、トオルちゃんに」
「ほんとですか?!でも、都筑さんがなんて言うか…」
「は?都筑さん?」

思わぬ名前が飛び出し、原口は驚いたように吾郎を見る。

「い、いえ!あの、誤解です!何を想像されているのかは分かりませんが、恐らく誤解です、原口さん」
「はあ、でも…」

すると安藤が、グイッと吾郎に近づいて来た。

「都筑さん、トオルちゃんに会わせてください!お願いします!」
「あ、いやー、あはは!何のことやら?」
「とぼけないでください!私、本当にトオルちゃんに会いたいんです」
「そ、そうですか。とにかく一旦落ち着いて」

両手を出して安藤を制していると、原口が戸惑ったように声をかけてくる。

「都筑さんは、トオルちゃんの居場所をご存知なんですか?」
「いや、その、まあ。知ってはいますが、果たして彼女が言っているのは、どっちのトオルちゃんのことやら…」
「えっ!トオルちゃんって、二人いるんですか?」
「それは、その、まあ。そうなりますかね?」

正確には、ロボット一体と子犬が一匹と人間が一人だが…

「知らなかった、安藤が三角関係だったとは」
「いえ!あの、原口さん?色々、誤解されてます。実は彼女が会いたがっているトオルちゃんは…」

吾郎が説明しようとした時、安藤がグイッと吾郎の襟元を掴み上げた。

「都筑さん!お願い、私をトオルちゃんのところに連れて行って!トオルちゃんを抱きしめて、あの温もりに癒やされたいの」
「あ、なるほど」

それならロボットじゃなく子犬の方ね、と吾郎が頷いていると、原口はもう見ていられないとばかりに安藤の口を塞ぐ。

「安藤、とにかくこの場は抜けろ。な?都筑さん、申し訳ありませんが、彼女をお願い出来ますか?」
「はあ、分かりました」

吾郎は仕方なく、安藤の腕を支えて店を出た。
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